約 1,304,861 件
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/323.html
「お疲れ様でしたー!」 そして、閉幕後。 無事に初日を終えて、達成感と充実感に満たされながらも、私はやっぱり千聖のことが気がかりで仕方なかった。 舞台の中で、千聖は私のアドリブに笑顔で応えてくれた。歌の時も、目が合うと笑ってくれる。でも、これは実はあんまりいい傾向じゃない。 千聖は裏で喧嘩や揉め事があると、反動なのか、ステージではものすごく愛想が良くなる。ということは・・・ 「はい、℃-ute集まってー!」 軽い反省会の後、無事初日を終えたお祝いということで、ちょっとした懇親会みたいなのがあった。 キュートのみんなと、共演者のみなさんと、スタッフさん。ちっちゃい部屋で、ジュースを飲みながらみんなでお喋りをする。そんなささやかなパーティーの中で、私は意を決して、ニコニコ笑っている千聖に近づいていった。 「千聖、ちょっと」 「ごめんなさい。舞さん、後でもいいかしら」 「・・・うん」 撃沈。 口調は柔らかいけれど、きっぱりはっきりと拒まれてしまった。「いいの?」なんて愛理となっきぃが千聖に聞いているけれど、当の本人はまったく意に介していないみたいだ。 「はぁあ・・・」 肩を落として元いた席まで退散すると、苦笑しているえりかちゃんと舞美ちゃんが苦笑で迎えてくれた。 「何だ何だー?またケンカ?今度はどうしたの?最近毎日ケンカしてるじゃーん、とかいってw」 「うー…もうだめかも。舞、消えてしまいたいよ・・・」 「そんなこと言わないで、舞ちゃん。今は間が悪いんだよ。あせらないあせらない」 両側から頭をなでたり、肩を抱いてくれたり。今はそんな二人の優しさが心地いい。でも、根本的な問題が解決したというわけじゃない。千聖との問題を解決させない限りは、いつまででも自分の胸に、このもやもやは燻り続けることになるんだろう。 「えりかちゃん、お願い。舞、今日中になんとかしたいよ。どうにかならないかな」 今は、恋敵じゃなくて、お姉ちゃん。私はえりかちゃんの腕を両手で握って、綺麗な形の目をじーっと覗き込んだ。 「今日中ねぇ」 「ていうか、今すぐ。」 よっぽど必死な顔をしてたんだろう。えりかちゃんは「わかった」と軽くうなずいて、千聖の側に行ってくれた。二言三言会話を交わすと、2人はそっと部屋を出て行く。・・・今は、えりかちゃんを信じて待つしかない。 「お姉ちゃん・・・」 祈るような気持ちで舞美ちゃんに寄り添っていると、急に後ろから「舞ちゃん」と名前を呼ばれた。 「なっきぃ。」 「今、いいかな」 眉をしかめて、ずいぶん深刻そうな顔をしている。 「舞ちゃんさ、千聖と何かあったの?」 「うん・・・ちょっと、ケンカ中かな」 「・・それ、私のせい?」 「え?」 なっきぃの言葉は予想外だった。私は目を瞬かせる。 「さっきね、千聖と愛理と3人で話してるときに、その・・・痴漢、の話になったのね。愛理が昔被害にあったことがあって、とっさにピンで手刺して撃退したとか、そういう話なんだけど」 愛理、つえぇ。 「まあ、それは別にいいんだけど、その時千聖がこう言ったの。“そういう犯罪は、絶対に良くないわ。痴漢や強制わいせつは、とても怖いことなのよ。それなのに舞さんはどうして・・・あぁ、ごめんなさい。何でもないの”」 「うわぁ」 私は気が動転して、「なっきぃ、千聖のモノマネうまいね」なんて間抜けな感想を漏らしてしまった。 「もう、何それ」 「・・・ごめん」 「だから、ちょっと気になって。舞ちゃん、千聖にちょっとやりすぎな悪戯でもしちゃった?ほら、だって、私と変なの見ちゃったから、もしかしてそれが原因だったら申し訳ないし・・・」 舞美ちゃんの手前、なっきぃはぼかしぼかし喋っていたけど、言わんとすることは十分わかった。 「・・・そうじゃないよ」 だから、私は即否定した。別に、なっきぃが悪いわけじゃない。 「あれは、ただのきっかけだから。遅かれ早かれ舞は千聖にああいうことして怒らせることになったんだろうし」 なっきぃが黙って、まじまじと私の顔を見る。 「・・・・・え、つまり、舞ちゃんは、無理やり千聖とエッチしたってこと?」 「ちょ、ちょぉなっきぃ」 気が動転したのか、なっきぃは意外なほど大きな声でそう言った。周りにいた人たちの視線が集まる。 「ど、ど、どどどどうしよう!私のせいで舞ちゃんが」 「え?え?え?え?」 泣き崩れるなっきぃに、目にいっぱいクエスチョンマークが浮かんでる舞美ちゃん。愛理はスタッフさんとの話を中断して、目をしばたかせてこっちを見ている。 「・・・舞が?チカン??ちっさーに???エッチ????えええ?」 「みぃたぁん・・・うわあああん」 「いや、違う。違わないけど。待って、舞の話を聞いて」 いよいよ手に負えない感じになってきたところで、目の前のドアが開いた。場違いなほどすっきりした顔で、えりかちゃんが戻ってきた。 「舞ちゃん、お待たせ・・・え、あれ?」 泣きじゃくるなっきぃに、ぽかーん顔の舞美ちゃん。困惑する周りの皆さん。異様な光景に一瞬躊躇するも、えりかちゃんはすぐに気を取り直して「とりあえず、行ってきたら?」と私を促してくれた。 「でも、」 「ケッケッケ。よくわかんないけど、こっちはまかせて」 「うん。千聖待ってるよ。奥から2番目の部屋ね。」 「・・・わかった」 あきらかに面白がってる愛理はともかく、えりかちゃんがそう言うなら。私は大急ぎで、目的の部屋に向かうことにした。 「・・・・千聖。」 第3稽古室と書いてあるその場所で、千聖はほおづえをついていた。 私が入っていっても別に驚かなかったから、きっとえりかちゃんから少し説明があったんだろう。相変わらず私の顔を見ようとはせず、しかめっつらであっちの部屋から持ってきたお菓子をぽりぽり食べている。 「・・・舞ちゃん、立ってないで座ったら」 「あれ。お嬢様じゃないの?また戻ったの?何で?」 「わかんないよ。えりかちゃんがスイッチ入れてくれるのかと思ってたけど、違うみたい。なんか勝手に変わるのかも・・・って別に今そんなのどうでもいいじゃん」 千聖はやっと顔を上げて、自分の隣の椅子を私のために引いてくれた。不機嫌なことに変わりはないけど、今度は私をちゃんと正面から見てくれた。 「怒ってるんだからね」 「うん」 「何であんなことしたの」 まだ少し怯えているのが、目の動きでなんとなくわかる。その顔を見てると、こんな状況だっていうのに、変に胸がドキドキする。 「何その目。やっぱり舞ちゃん変だよ。絶対おかしいから」 「だからごめんってば。謝ってるじゃん」 「何だその言い方。どうせ反省してないんでしょ」 「はぁ?してるし」 千聖は少し調子を取り戻してきたみたいで、徐々に言い合いがヒートアップしてきた。 この勢いなら、なしくずしで仲直りできるかもしれない。 でも、私はちゃんとけじめはつけておきたいと思った。それが千聖への誠意であり、わざわざ機会を作ってくれたえりかちゃんへの礼儀でもある気がするから。 オホンと一つ咳払いをして、話を軸まで戻す。 「・・・なっきぃの家で、エッチビデオを見て」 「は?え?・・・うん」 「それで、何て言うか・・・・千聖と同じようなことしたら、どうかなって思ったの。まあ痴漢はだめだけど、エッチぐらいなら受け入れてくれるかななんて思って。それで、あんなことをしました。すみませんでした。」 こうして言葉にすると、私って本当に最低なことしたんだなとあらためて感じる。何だ、その理由は。 「最悪・・・」 「でも!私は千聖が良かったんだよ。舞美ちゃんでもえりかちゃんでもなっきぃでも愛理でもなく、千聖としたかったの。好きなの、本当に。千聖のことが。 だから舞以外の人とはしないでほしかったの。・・・でもあんなことはしちゃだめだったと思うけど・・・ごめんなさい・・・」 自分でもかなり勝手なことを言ってるとわかっているから、最後のほうは尻すぼみになってしまった。はずかしくて千聖の顔を見れない。 「もう、わかったから。舞ちゃん」 少し時間が経ってから、千聖はそっと私の顔を撫でた。顔を上げると、たまに見せる、困ったような笑顔をしている。 思わず抱きつくと、優しく背中に手を回してくれた。そして、「でも、本当に怖かったんだよ」とつぶやいた。 「ごめんね」 「舞ちゃんが、違う人みたいに見えた。舞ちゃんにされたことも怖かったけど、それより、舞ちゃんと千聖の関係がめちゃくちゃに壊れちゃうんじゃないかって思って。それが一番怖かった。」 「ごめん、千聖」 「千聖、舞ちゃんのことちゃんと好きだよ。だから悲しかったの」 本当にバカ。信じられないぐらいバカ。 許されると思って調子にのって、こんなことまで千聖に言わせるなんて。最低人間だ、私。 頭の上に鉛でも乗っけられたように、自然に頭がズドーンと下がっていく。 「そんな顔しないでよ、舞ちゃん。相方がそんなんじゃ、千聖も元気でないよ」 「・・・まだ、舞は千聖の相方でいいの?」 「当たり前でしょー」 それで千聖は、やっと、しばらくぶりに満面の笑みを見せてくれた。 「もうあんなことしない?」 私の髪を撫でながら、お姉ちゃんな声で千聖が聞いてくる。 「・・・それはわかんない。だって、やっぱり好きなんだもん。千聖のこと」 「最悪・・・」 でもその声は柔らかくて、千聖はまた困ったように笑っていた。 「千聖。」 「うん」 自然に顔が近づいて、唇が重なる。今度は千聖は暴れないで、じっと受け入れてくれた。 あの時みたいに、興奮はしなかったけど、私は幸せだった。キスで穏やかな優しい気持ちになれるなんて知らなかった。それはごく普通のキスだけれど、今まで何度かした中で一番気持ちがよかった。 「・・・そろそろ戻らなきゃ。千聖、先に行くね」 しばらくして顔を離すと、少し赤い顔で千聖は勢いよく立ち上がった。・・なんだ、ムードも何もあったもんじゃない。 「一緒に戻ろうよ」 「やだよ。えりかちゃんに何か言われる。さっきだって舞ちゃんが来る前すっごいからかわれたんだから」 千聖はこういうとこ、結構ドライだと思う。まあ、やっと許してもらえた立場で文句は言えないけれど。 「ねえ、私とえりかちゃんどっちが好き?」 その代わりといっては何だけど、千聖が部屋を出る寸前、私は本日最後のワガママをぶつけてみた。千聖は目をパチパチさせながら振り返った。 「ねえ、どっちが好き?」 語気を強めてもう一度問いかけると、千聖は少し考え込むように黙ってから、黙って唇の端を吊り上げた。これは、なかなか嫌な笑顔だ。 「・・・えりかちゃん、かな」 「はぁ!?何でよ」 「えりかちゃんは舞ちゃんみたいに、千聖が嫌がることしないもーん」 自分から仕掛けたとはいえ、千聖の返答に、私はガックリ肩を落とした。 「・・・もーいい。さっさとえりかちゃんのとこ行けば?舞もすぐ戻らせていただきますから」 「・・・でも、舞ちゃんのことも好きだよ。」 苦笑したまま私を置いて行こうとした千聖は、去り際そんなことを口走った。 「は・・」 「うへへ、大好き!」 ニカッと笑って、ピースサイン。今度は振り返らずに、鼻歌なんて歌いながら、千聖の声は遠ざかっていった。 「・・・何それ。ずるい。」 後悔とか、反省とか、安心とか。いろんな気持ちが混じって、私は一人静かな部屋でじたばたした。 「やっぱバカだな、舞って。千聖バカって感じだ」 千聖バカ、か。自分でいうのもなんだけど、こんなしっくりくるあだ名も珍しい。 「ふふふ」 とりあえず、このニヤニヤが収まるまではここにいよう。唇を指でなぞって、私はもう一度小さな笑い声を漏らした。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/125.html
ベッドサイドに腰掛けた千聖の太ももに手を置いて軽く撫でると、千聖は小さく息を呑んで体を揺らした。 「・・・何にもしないよ。まだ。」 ちょっとからかうだけで、千聖の顔は耳まで真っ赤になる。 「嬉しかった。」 「え・・・?」 「千聖が部屋替えしようって提案してくれて。もちろん千聖と一緒の部屋っていうのが一番良かったんだけどね、たまにはあんまり一緒にならない人と同室っていうのも面白いかなって。 私がいつも一人部屋なの気になってたんでしょう。ありがとね。」 千聖はさらに顔を赤くして、口の中で何かモコ゛モコ゛呟きながらうつむいた。 千聖の気づかいは本当にさりげなすぎて、いつも見落としてしまう。 人懐っこいわりに、意外な程不器用な千聖。私はその健気な優しさに気付くたび、泣きそうなほど切ない気持ちを覚える。 「千聖も、寝っ転がって。」 千聖は見返りを求めて、人に優しくしてるわけじゃない。 それでも私は千聖に何かしてあげたかった。 「・・・服に、しわがついてしまうわ。」 「ちょっとなら大丈夫だよ。」 静かに体を横たえた千聖の耳に触れる。 「っ・・・」 遠くの方で、なっきぃや舞美たちが弾けるような明るい声ではしゃいでいる。外に出て、みんなで遊んでいるんだろう。 楽しそうな声が聞こえているのに、こんなに静かな場所で私たちは。 「えりかさん」 顔を近づけると、千聖は深く目をつぶって唇を寄せてきた。 「・・・だーめ。」 指で押しとどめられて、少しだけ不満そうな顔になる千聖。 こんな行為にも一応私なりのルールがあって、例えば、口と口でキスをしない。押し倒さない。上に乗っからない。・・・指突っ込まない。 これを守ることで、私と千聖はどうにか仲間であり友人である今までの関係を保っていられるのだと思う。 「梅さん、チューするの好きじゃないの。」 嘘だけど。 「で、でも、いつもえりかさんは私の体に・・・その、えと、唇で・・・」 「私がするのはいいんだよ。」 「あっ」 手を繋いで、空いている側の手で体のラインを辿る。 「えりかさん・・・」 掠れた声で私の名前を呼んで、千聖はいきなりしがみついてきた。 千聖のあったかい息が、私の胸に染み込む。背中が粟立った。 こんな真昼間に、これから仕事なのに、私たちはなんてことやってるんだろう。 投げ出した足が絡み合う。少し汗ばんだ肌同士がしっとりとくっついて、もう引き返せなくなりそうだった。 千聖が私にこういう行為を求める時は、2パターンある。 単純に、気持ちいいことを楽しみたいとき。これは今みたいなパターン。 それから、漠然とした不安や寂しさに襲われて、誰でもいいから体に触れて欲しいとき。これも、たまにある。 最初は胸を触るぐらいだった関係が、だんだんとエスカレートしている。こんなんでいいのかと思いつつも、私は楽しい方へ流されてしまう性格で、今この瞬間も千聖との行為を楽しんでいることは否定できない。 「可愛いよ、千聖。胸大きいね。お尻ちっちゃいね。足長いね。」 「ゃ・・・恥ずかしい・・・」 私のアホな言葉責めに、千聖はいちいち反応する。 その仕草がいちいち扇情的で、私はどうしようもなく理性を揺さぶられる。 「えりかさん、私・・・」 千聖が再び、唇を近づけてきた。 あっヤバイ。 物思いにふけっていたから、気付いたら避けることができなそうな距離になっていた。 「ダメだって・・・」 「おーい!!!!えり、ちっさー、出てこれる?みんなでバトミントンやってるんだけど、どう?一緒にやらない?」 その時、ガンガンと全力ノックの音とともに、舞美の元気な声が外から聞こえた。 バトミントン・・・何て健全な遊びなんだろう。 「あ、うん。準備して行くね。」 「えりかさん・・・!」 めずらしく、千聖がとがめるような声を出した。 「・・・ごめん。でも、怪しまれちゃうよ。ね、みんなのとこ行こう?」 私は体を起こすと、千聖のワンピースを綺麗に整えた。 顔を見ることはできなかった。泣きそうになっているのは気配でわかった。 「先に、行っててください。ちゃんと追いかけます。」 千聖は早口でそう呟いて、体を離した。 これでよかったのかな・・・?でも、今の千聖と私の「秘密」を守るためには、最善策のはずだった。 「ごめんね、千聖。」 「・・・いえ、いいんです。ちょっと、寂しかっただけです。」 寂しかった?どうして? 私の疑問は宙に浮いたまま、千聖は洗面所へと消えてしまった。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/105.html
「みぃたんも話し中かぁ・・・」 ケータイを放り出して、ベッドに顔を埋める。 千聖と栞菜、何があったんだろう。 えりかちゃんとみぃたんに電話をしてみたけれど、2人ともつながらなかった。もしかしたら、お姉さん同士で話し合ってるのかもしれない。 栞菜はあんな状態だし、千聖に直接聞くのもはばかられるし、手がかりは途絶えてしまった。 女子7人、小さないざこざならいくらでもある。 でも、まさかあのお嬢様状態の千聖が当事者になるなんて思ってもみなかった。それも、事態はかなり深刻なようだった。 私は結構おせっかいな方なのに、ああいう時てんで役に立たない。 年下の舞ちゃんに促されて退場だなんて、今思い出しても恥ずかしい。 名誉挽回というわけじゃないけれど、せめてもう少し力になりたい。 電話がだめならとメール、とみぃたんに向けて文章を作り始める。 でも言いたいことがうまくまとまらなくて、結局打っては消し・・・を繰り返してしまった。 「はあ~・・・・」 長いため息と一緒にこの重苦しい感情も吐き出せたらよかったのに、なんだか余計に辛くなってしまった。 泣き虫キャラは私一人で十分。みんなの涙なんて見たくない。 だからといって、私に何ができるんだろう。 「・・・もう寝る。」 これ以上起きていても、どんどんネガナッキィになるだけだ。 全然眠くなんてなかったけれど、とりあえず日課の恨み空メールを打った後、部屋を真っ暗にして布団の中にもぐりこんだ。 寝返りを打ちながら目をつぶって、寝てるんだか起きてるんだかよくわからないまま、気がついたら朝になっていた。 「だるい・・・」 頭は興奮していても体は疲れていたから、全然疲労感が取れなかった。 時間を確認しようとしてケータイを開いたら、えりかちゃんからメールが届いていた。 “オフの日にごめんね!暇な人、10:30に○×駅前のファミレスに来てください!” 一斉送信ぽい文面だ。一応送信先を確認してみると、栞菜千聖、みぃたん以外のキュートメンバーのアドレスが入っていた。 これは間違いなく、昨日の件に関係あるんだろう。えりかちゃん(と多分みぃたん)は私がうじうじ悩んでる間に、ちゃんと対処法を考えていたんだ。 「私、まだまだだなぁ。キュフフ」 不思議と落ち込んだ気分にはならなかった。お手本になってくれる年上のお姉ちゃんの存在が、なんだか嬉しく感じた。 「で、10 30集合か・・・・ってヤバイヤバイヤバイ!」 改めて時計を確認して、私は血の気が引いていくのがわかった。 ガバッと飛び起きると、一気に階段を駆け下りてリビングに転がり込んだ。 「ちょっと!!なんで起こしてくれないの!!!もう10時じゃん!」 テレビを見ながらダラダラしていたお姉ちゃんと妹に八つ当たりしながら、その辺にほっぽり出してあった服を急いで身につけていく。 「知らないよそんなのキュフフ。」 「キュフフ、ていうか、さっき様子見に行ったらいびきかいて寝てたけど。」 いびき、ですか。なんだかんだで結構深く眠っていたのかもしれない。 まあ疲れていたから仕方ないけど、姉妹にネタにされて笑われるのは面白くない。 「ちょ、ちょっと私出かけj4$a^/tf- るらぁ!!」 慌てていたのと気恥ずかしさとで、私はみぃたんのごとくカミカミになりながら家を飛び出した。 駅まで自転車ですっ飛ばしている途中で、もう一度待ち合わせの駅の名前を頭に思い浮かべた。 何でまた、○×駅? 渋谷や新宿みたいに栄えているわけでもないし、メンバー全員の家から近いわけでもないのに。 しばらく考えてから、私はハッと思い至った。 「そっか、栞菜の最寄り駅なんだ・・・・」 TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/108.html
改札をくぐると、運よく急行電車が入ってきたところだった。 ギリギリ乗り込むことができたから、どうやらそれほど遅刻しないで済みそうだった。 一応皆にお詫びのメールを打っておこう。 定型文を少しいじって送信したら、すぐに返事が来た。 “わかりました 気にしないで 私はもうつきました まだ誰も来てない 待ってます 目立つ格好してます 舞” 句読点がない。敬語。改行改行改行。怖すぎる。 舞ちゃんは基本大人びた子だけれど、どうも千聖が絡むと見境がなくなってしまう。 栞菜と千聖の事件を引きずりまくっているのはこの機嫌の悪い文章からも明らかだ。 思えば昨日の帰りも相当ひどかった。 みぃたんに先に帰るよう指示されたときは仁王像のような顔になり、私と愛理の不自然に明るいおしゃべりを聞いてる時の瞳の凍った笑顔は、一部のファンの人に殺戮ピエロと称されるあの表情そのものだった。 今日の話し合いの流れ次第では、舞ちゃんの感情が爆発してしまう可能性もある。 栞菜と舞ちゃんも仲のいい2人ではあるけれど、お嬢様の千聖をあんな状態に追いやってしまった相手のことを、冷静な目で見られるかはちょっと微妙なところだ。 舞ちゃんは決して冷めている子じゃない。 むしろマグマのように煮えたぎる思いをたくさん胸に秘めていて、いきなりそれをドカンと噴火させてしまうような恐ろしさがあった。 今日の私の役割は、お姉さんたちからの話(作戦?)をしっかり聞いて、舞ちゃんを宥めながら場の空気を良くしていくことなんだろうな。 私は私のできること・やるべきことで、グループの問題根絶を目指していこう。 「よしっ」 電車が目的の駅に着いた。気合を入れなおして、私は電車を降りた。 改札を目指して歩いていると、いきなり後ろから肩を叩かれた。 「なっきぃ、おはよ。」 「あれっ愛理も遅刻なの?珍しい~」 「何か眠れなくって、ぐずぐずしてた。」 深めにかぶった帽子をちょこっと上げて、愛理は困ったような顔で少し笑った。 「みんなもう着いてるかな?急ごっか。・・・なっきぃ、今日服の感じ違うね。」 「そ、そう?まあまあ気にしないで!」 本当に大慌てで家を飛び出してきたから、私は今日自分がどんな格好なのかよく確認していなかったんだけれど。 変な色落ちのジーパン(姉私物)に変な緑色のしましまTシャツ。しかもキモイみかんのキャラつき(妹私物)。変な色のクロックス。すっぴん。ダサダサ! きちんとコーディネートしてる愛理と比べて、なんていうか、私アイドルとしてどうなんだろう・・・ みぃたんが見たら、きっと自分のモサ服を棚に上げて大笑いするだろうな。 若干胃が痛くなってきたけれど、いつまでもボサッとしていられない。 愛理と2人、駅のまん前にあるファミレスに連れ立って入っていった。 「どこだろう・・・」 時間が時間だけにお客さんはあんまりいないけれど、入り組んだ造りになっているから座席の様子が見えづらい。 「なっきぃ、なっきぃ。ちょっとあそこ。」 きょろきょろしていたら、愛理が急に声をひそめてそでを引っ張ってきた。 視線を辿ると、奥の方にえりかちゃんとみぃたんの姿が見えた。なぜか深くうつむいている。 そしてその向かいには 「・・・何、あれ?」 遊園地とかによくいるような、でっかいうさぎの後頭部がのぞいていた。 店員さんも、うさぎの方をちらちら見ながら困惑した顔をしている。 「行っていいんだよ、ね?」 「ちょっと待って、愛理。」 私の頭には、小さい頃にデパートかなんかであのうさぎに追いかけられた恐ろしい記憶がよみがえっていた。 何年か前に読んだ本で、あの着ぐるみを着た変質者が女子高生をターゲットに連続猟奇的殺人を起こすというのもあった。 うつむいて動かない、みぃたんとえりかちゃん。心なしか震えているようにも見える。 もしや何かの犯罪に巻き込まれてる? テーブルの下で、ナイフか何かで脅かされてるのかもしれない。 「愛理、静かにね。」 何で舞ちゃんがいないの、とか 何で店員さんは通報しないの、とか そんな疑問をすっ飛ばして、私は思い込みの迷路の中に迷い込んでしまった。 「みぃたんたちを助けよう。」 「ええっ?なっきぃ?」 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/103.html
私はこんな時、気の利いた言葉ひとつかけてあげることができない。 ちっさーは悪くない。栞菜だってきっとそう思ってる。 そう言ってちっさーを安心させてあげたいのに、言葉にしたら嘘っぽくなってしまいそうで怖かった。 今私にできるのは、しっかりとちっさーを抱きしめて、涙をこぼす場所になってあげることだけだ。 両腕が痛むほどちっさーの体を強く抱くと、ずっと強張っていた体から、ため息とともにゆっくり力が抜けていった。 「ちっさー?」 よっぽど気を張っていたのか、ちっさーは私に体を預けたまま、微動だにしなくなった。 赤ちゃんみたいな仕草で、健気に私の服の裾を握り締めているのを見ていたら、鼻の奥のほうがじんわり痛くなってきた。 嫌だな。何だか最近涙もろくなっている。 キュートのリーダーとして日々成長していかなくてはいけないのに、私の至らなさが年下のメンバーを傷つけている現実が、重く心にのしかかってきた。 去年の今頃は、今年こそ誰もが認める頼れるリーダーになっているはずと思っていた。 でも相変わらず私は周りの変化に鈍感なまま、ちっさー(栞菜もそうかもしれない)が出していたサインに気づいてあげられなかった。 「・・・舞美さん、ありがとうございます。もうそろそろ帰らないと」 しばらくそのままぼんやりしていたちっさーは、体を起こすと、少しカツゼツの悪い口調で喋り出した。 「あっ・・・うん、そうだね。遅くなっちゃったね。じゃあ行こうか。」 「舞美さん、」 私の目が少し潤んでいるのに気づいたちっさーは、ぎこちない仕草で目じりを指でなぞった。 こんな状況で、ちっさーのほうがよっぽど辛い気持ちを味わっているのに、私を思いやってくれるその透明な心が今は苦しかった。 「大丈夫、ありがとう。」 駅までの道も、電車の中でも、私たちはひたすら無言のまますごした。 私が強くちっさーの手を握る。 ちっさーも強く握り返してくれる。 ただそれだけのつながりでも、ちっさーの支えになればいいと思った。 ちっさーの最寄りの駅が近づいてくる。 「送ってくださって、ありがとうございました。」 速度を緩めた電車の中で、ちっさーは軽く笑って頭を下げた。 つないでいた手が離れる。 「ごきげんよう、舞美さん。」 ホームに降り立ったちっさーは、そのまま歩いて去っていこうとする。 「ちっさー!何か私、なんにもしてあげられなくてごめんね!でも私は、ちっさーのこと大好きだから!栞菜のことも!だから、」 電車のドアが閉まった。 私の大声に立ち止まったちっさーには、どこまで声が届いたかな。 頼りないリーダーでも、キュートのメンバーをいつも全力で愛しているこの気持ちだけは伝わっただろうか。 明日は久しぶりのオフだけれど、こんなに高揚した気分じゃのんびり過ごせそうにないな。 できたら、メンバーの誰かに会いたい。 そんな風に考えていたら、バッグの中でケータイが振動した。 「・・・・すっごい。以心伝心だ、とか言ってw」 立ち直りが早い性質の私は、ケータイを開いた時にはもう心のもやもやが8割消えてしまった。 えりから、“明日、お暇?ちょっとした計画がありまして”とのメールが来ていた。 もちろん!と返事を打ちかけて、私はふと思いとどまりケータイを閉じた。 明日会う前に、今日のちっさーのことをえりと電話で話そう。 行き止まりであたふたしている今の私のことを、えりなら、向こう側から壁を壊して手を差し伸べてくれる気がする。 「多分その計画、乗っちゃうよ。」 家に帰るまでなんて待てない。 降りる駅で電車のドアが開いたと同時に、通話ボタンを押した。 えりののんびりした可愛い声が耳に届く。 今日は何とか、穏やかな気持ちで一日を終えられそうだ。 戻る TOP コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/2.html
お知らせなど トップページ お嬢様とベリキュー女子校(新聞部編4) お嬢様とベリキュー女子校(新聞部編3) お嬢様とベリキュー女子校(新聞部編2) お嬢様とベリキュー女子校(新聞部編1) お嬢様とベリキュー女子校(ちさまいデート編1) 岡井ちゃんが階段から落ちた(番外者編6) 岡井ちゃんが階段から落ちた(番外者編5) お嬢様とベリキュー女子校(番外者編10:劇) お嬢様とベリキュー女子校(番外者編9:くまなき)
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/124.html
前へ “舞ちゃん、もうちょっと千聖のこと優しく扱ってあげたら。” 前にそう言っていたのはなっきぃだったっけ。それともえりかちゃんかな。 私は昔から、千聖をどこかに連れて行くとき、手首や肩を掴んで引っ張る癖があった。 千聖も特に何も言わなかったから、指摘されるまで気づかなかった。 あんまりお行儀のいい行動じゃないから控えるようにはしていたけれど、気をつけていないとついやってしまうみたいだ。 そう、今みたいに。 「舞・・・・さん」 千聖の苦しそうな声で、はっと我に返った。 顔をあげると、痛みに耐えるような表情の千聖と目が合う。 私は力いっぱい千聖の両腕を握り締めていたみたいだ。 「ごめん・・・」 謝って力は緩めるけれど、千聖の体から手を離すのは嫌だった。 触れたままの千聖の二の腕が、熱を持っているのが伝わる。 私の手もズキズキ痛んでいるぐらいだから、千聖はもっと痛かっただろう。 「舞ちゃん・・・ちっさー痛そうだよ。放してあげて。」 栞菜がそっと私の手に手を重ねる。 「もう、今のちっさーを受け入れようよ、舞ちゃん。 ちっさーはね、大好きな舞ちゃんが自分のせいで傷つくからって、キュートをやめようかって私に相談してきたんだよ。」 「栞菜、その話は」 「ううん、言わせて。・・・・・舞ちゃんは、そんなこと望んでないよね?でも、今のままじゃちっさーは舞ちゃんのためにいなくなっちゃうかもしれない。 私は嫌だよ。めぐがやめちゃって、ずっと7人で頑張ってきたのに。もう大好きな人がいなくなるのはやなの。舞ちゃんも、ちっさーも、みんなでずっと一緒にこれからも頑張っていきたいのに。」 最後の方はもう悲鳴のような声になっていたけど、栞菜は私から目を逸らさずに思いをぶつけてきた。 でも、私の耳にはその言葉が半分も入っては来なかった。もっと大きすぎる衝撃で、頭が真っ白になってしまっていたから。 ・・・千聖が、キュートを? 辞める? 私が責めたから? 「わ・・・・私は・・・・」 違う。 私はそんなことを望んでいたんじゃない。 でも、私のせいで、千聖は 「舞美、・・・・何がどうなってるの?千聖が辞めるって、どうして?お願い、ちゃんと説明して。」 背後でキャプテンの声が聞こえた瞬間、私の心は現実に戻った。 「千聖がやめることなんてない。」 自分のものとは思えない、低い声が口を飛び出した。 栞菜の手も千聖も振り解いて、ドアの方に向かって歩く。 「舞ちゃん!」 「・・・・しばらく一人にして。その間に、みんなに千聖のこと話して。」 不思議な感覚だった。体全部が心臓になったみたいにドクドクしているのに、頭は冷え切っている。 「・・・・・千聖がやめるぐらいなら、私がいなくなるから。」 吐き捨てるような口調でそう言い残して、早足で去っていく。 誰も追いかけてこない。たまたま目にした衣裳部屋に入って、隅っこで膝を抱えてうつむいた。 私は、何をやっていたんだろう。 まったく自覚のない涙が、ポツリと一滴膝に落ちた。 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/375.html
「あーきもちぃっす・・・」 背骨に沿って親指で押し上げると、千聖は妙に濁った声を漏らして、ぐったりとベッドに顔を押し付けてリラックスモードに入った。オッサンか。 「えりかちゃんてさ、手器用だしこういうの上手いよね。メイクも上手いしさー、あっあと料理も!」 エッチな雰囲気を回避できたと思ったのか、千聖は喋る。ベラベラ喋る。次に私が何か喋ったら、また変なムードを作られると警戒してるんだろう。そのうち全然関係ない千聖のおうちのワンちゃんの話までし出した。 「でね、弟が・・・あっじゃなくて妹がね、明日菜じゃないよ、下の方ね、あっでも明日菜も・・・」 「へー。ふーん。」 一度喋り出すと、周りが見えなくなるほどマシンガントークをかましてしまう。 それは自他共に認める千聖の癖だけど、今のこの感じは違う。話に脈絡がなさすぎる。必死すぎ。 別に、こっちの千聖とエッチなことするの初めてじゃないのにな・・・。いつだったか漫画喫茶で触りまくったし、お嬢様とイチャイチャしてる最中に明るい千聖に入れ替われば、最後までは許してくれなかったけれど、そのまま少しは続けさせてくれたのに。 ほぼ生返事の相槌を打ちながら、私の指は少しずつ位置を変えていく。 「そうだ、あとね、担任の先生が・・・・んああっ!!?」 「わあっ!」 辛抱たまらん。イタズラ半分で腰を掴んでモミモミすると、予想以上に大声を出されてしまった。 「ち・・・ちさ」 切れ長の目をカッと見開いて、千聖は慌てて両手で口を塞いだ。 「・・・ごめん。さ、殺人事件とか思われてないよね?」 「ぶっ」 気を使って喋っていたところを、いきなりセクハラで邪魔したんだから、キレられてもしかたないと思った。なのに、小声で伺ってくるのは、そんな間の抜けた質問。千聖は舞美ほどアレじゃないけど、天然の要素は十分あるのかもしれない。 「大丈夫、いいホテルだから。声漏れない」 「ぅあっ」 私は仕切り直しとばかりに、もう一度千聖の腰を強く掴んだ。 「待って待って待って!」 「やだ」 ふわふわ柔らかいベッドは、、私と千聖の重みをそのまま受け止めて、蟻地獄のように体を沈ませる。うまく踏ん張れなくなった千聖は、私に腰を抱え込まれたまま、すごい体勢になっていた。 たとえて言うなら、悪いことをしたチビッ子がお尻を叩かれるときみたいな、下半身だけを捕まえられてる状態。 「えりか・・・」 「大丈夫大丈夫。さっきの話の続きして?」 「できるわけないじゃん、もう!」 よしよし、いい傾向。千聖がプンプン頭から湯気を出している間が勝負。私はお胸に負けず劣らずたゆんと揺れるお尻を掴んで、むにゅっと揉んだ。 「うっわちょっと!やめてよえりか変態!」 「何言ってんの、さっきまで裸で暴れてたの誰だっけ?」 身長差がこれだけあってよかった。お尻を捕まえたまま、横からニューッと顔を突き出して、フガフガと言い訳する唇を奪う。 「んー・・・」 「大丈夫、怖いことしない」 「してんじゃん・・・もう舞ちゃんもえりかもマジ変態」 「まあまあ、そういわずに」 悪態をつきつつも、千聖はとりあえず本格的に嫌がっている様子ではない。 「気持ちよくしてあげるから」 「んっ!」 そっと女の子の大事なところの表面に触れて、お風呂の時みたいに軽く擦ってみる。クタッと倒れた耳に息を吹きかけると、もう千聖はすっかり大人しくなった。 こっちの千聖はよく覚えていないのかもしれないけど、私はお嬢様の千聖と、それなりの回数こういうことをこなしている。神経や感覚は同じなのだから、快感を与えることはそんなに難しくない。 「んっ・・ん・・・えりかちゃん・・・」 私のあまりの手際のよさに、ちょっと戸惑っているようにも見える。千聖が思っている以上に、私は千聖の体のことを知っているのかもしれない。 ソコを指でいじって、腰をくすぐって、胸に触れて。お決まりのコースを辿れば、千聖は思い描いたとおりの――お嬢様と同じような反応を示してくれる。 普段はあれだけ元気でテンションの高い子が、どうしたらいいのかわからないみたいな戸惑った顔で、発情期の猫みたいな声を上げているのは何かドキドキする。男の人がよく言う、ギャップ萌えみたいなものだろうか。 「えりかちゃん・・もう・・・」 奥二重の目が、トロンと蕩けて半開きになっている。甘い色を帯びた自分の声が恥ずかしいのか、千聖は私から顔を隠すようにそっぽを向いた。 この先の快感は、まだこっちの千聖には教えたことがない。でも、この様子だと、何も知らないというわけでもなさそうだ(舞ちゃんあたりが怪しい・・・) 「いいの?」 「・・・」 何も答えは返ってこないから、長年の付き合いから割り出した判断で、勝手に続きをさせてもらうことにした。 「力抜いてね」 「く・・・ぅ」 軽く指をくぐらせると、最初の時よりはずっと楽に、その場所は私を受け入れてくれた。気持ちいいのかどうかはよくわからない。千聖は小刻みに震えていた。 お風呂の中の時の動かし方だと、わりと良さそうだった気がする。私は両手を千聖のソコへ持っていった。 「っ・・・!や、あ、あ・・・」 すぐに反応が変わる。すごい背徳感。そりゃあそうだ、こっちの千聖は千聖お嬢様よりずっと付き合いが長くて、苦楽を共にしてきた仲間で、そんな存在の子にこんなことを仕掛けるなんて、結構な事態だ。 「だめ・・・えりか・・・・」 膝がピクッと跳ねる。千聖の全身が緊張する。 「あ・・・・っ・・・?」 そのタイミングで、私はスッと指を離した。千聖が驚愕の表情を浮かべて、私を凝視する。 「なぁに?」 「ぇ・・・だって・・・」 千聖の顔を見ながら、もう一度、一連の行為を始める。 「ひゃ・・・んんっ」 さっきよりも早く、激しく、千聖の体が反応する。・・・また手を離す。 「やだっ・・・えりか・・」 千聖の波が引くのを見計らって、何度も何度も繰り返す。相当酷いことをしてる自覚はあるのに、このある意味残酷な行為をやめることができない。何度目かに指を離すと、千聖は急に体を引いて、私の首に手を絡ませてきた。 「いじわるしないで・・・」 そのまま、自分の体ごと、私をベッドの上に倒す。今まで見たこともない淫靡な表情。カッと頭が熱くなって、散々焦らしたその場所に、また手を這わせた。今度はもう、途中でやめない。 千聖の唇から漏れるのは、もはや悲鳴のようだった。壊れた操り人形みたいに、小さな体がガクガクと揺れる。 何かにすがるように伸ばされた指を握り締めながら、私は千聖が脱力していくまでをしっかりと見届けた。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/371.html
唇を弄っていた指が、歯をなぞって中に入ってくる。 「ぅ・・ん」 「歯、立てないで。大丈夫だから」 えりかさんの声は近いような遠いような不思議な響きを帯びながら、耳を熱く掠めていく。舌の上で指が踊って、出したくもない変な声が漏れる。 「もう少し・・ごめんね」 眦に触れた唇が、零れ落ちる涙を掬い取ってくれた。 「ウフフ・・・」 「どうしたの?」 唇と胸から、えりかさんの手が離れる。少し不安そうな顔をなさっていて、私は慌てて「違うんです」と言葉を繋いだ。 「ごめんなさい、何か、嬉しくて」 「嬉しい?」 「何か、今日の千聖はえりかさんの恋人になれたみたいで・・・」 思い切って言ったものの、えりかさんの反応が怖くて語尾が萎んだ。 今日はいつもの触れ方とは違っているから、調子に乗ってしまったのかもしれない。 でも、私を落ち着かせたり気持ちよくさせてくださるだけじゃなくて、えりかさんも楽しんでいらっしゃるような・・・それに、今日はいっぱいキスをしてくださるから、そんな都合のいい思いが浮かんだのだと思う。 うつむいてまともに顔を見れないでいると、えりかさんが下から私の顔を覗き込んだ。少しずつ距離が縮まって、また唇がくっつく。 「えりかさん、」 「言ったでしょ、千聖はえりのだって。」 「・・・舞さんも、いつも千聖に同じことを言ってくださるわ」 「ええっマジですか!・・・・・・じゃあ、舞ちゃんと共有ってことで」 えりかさんの大げさなリアクションに和んで、顔を合わせて笑ってしまった。・・・でもきっと舞さんは、そんなことは認めないって怒り出しそう。 「続き、してもいい?」 「ええ。・・・えりかさん、今日、爪が随分短いですね・・」 さっきまでは気づかなかったけれど、いつも大人っぽく四角い形に揃えられているえりかさんの爪は、指との境目ぎりぎりまで丸く切られていた。 同じ形にしたくてこっそり伸ばしていた自分の爪が、置いてけぼりになってしまったみたいで少しだけ淋しい気がした。 「うん、まあね。これぐらい短くしておかないと、千聖が・・」 「え?」 聞き返そうと顔を上げかけた時、突然、無意識に腰がビクッと跳ねた。 えりかさんの指が、ソコ、にあてがわれていた。 お湯の中で踏ん張りの利かない足が、もたもたともがく。 「やっ・・・えりか・・・・」 「ダメ?」 その場所に触られるのは初めてではないけれど、普段とは違う気がした。表面を指で擦るいつもの行為ではない、細やかな指の動きになんとなく不安を覚えた。 「なるべく痛くしないから・・・」 片側の手で私を抱き寄せて、髪にキスをくれる。身長の低い私の目線には、えりかさんの胸。ただ大きいだけの私のとは違って、白くて形が良くて、うらやましい。甘えるように顔を埋めると、柔らかい感触に包まれて心地良い。 ボディソープで洗ったばかりなのに、えりかさんの胸からは、薔薇の香りが仄かに感じられた。いつも使っていらっしゃる練り香水の匂いは、もう肌に馴染んでいるのかもしれない。何となく安心感を覚えて、えりかさんの背中に手を回して目を閉じる。 「嫌だったら言って、すぐやめるから。痛いのもちゃんと言って」 「・・・はい」 動きを止めていた手が、何かを探るようにその場所を這う。くすぐったさで体が強張る。 「千聖、ちょっと力抜いて」 肩を抱いていた手が、すっかり敏感になってしまった胸の先を摘んだ。 「・・・っ!やっ・・・待って・・・」 「落ち着いて、怖くないから」 下に添えられた指の動きが変わった。 感じた事のない違和感と、少しの痛み。えりかさんが私のそこに、指、を入れようとしている。 「痛い?」 「少し・・・。でも、大丈夫、です」 「続ける?」 「・・・・はい」 「わかった。じゃあ、難しいかもしれないけど、もうちょい力抜いて・・・」 腰を掴まれたり胸に触られると、体がビクンと跳ねて動かなくなる。えりかさんはそのタイミングを計って、指を押し入れているようだった。少しずつ圧迫感が深くなる。 お湯に浸かっている体はぽかぽかしているのに、えりかさんと繋がった部分は冷たいような熱いような、不思議な感覚だった。 「・・・千聖」 「んっ」 食まれた耳が熱っぽく疼く。えりかさんは私の反応に満足したのか、ほんのり笑って「繋がってるとこ、見る?」と囁いた。 「う・・・」 さすがにそこまでの勇気はなく、無言で首を振る。特に気分を害したようでもなく、えりかさんはうなずいてまた私を抱き寄せてくれた。 「・・・」 「・・・」 それからしばらく、えりかさんの指が体の中に入ったまま、無言で寄り添って観覧車を眺めた。 気まぐれに顔に降ってくるキスが気持ちいい。ただただ幸せで、ゆるやかな時間が流れる。 「髪、伸ばすのやめちゃったの?」 「ええ。短い方が千聖らしいのかしらって・・・あ・・・」 頭を撫でてくれるえりかさんの手を取って指に触れたとき、ふとあることが頭に浮かんだ。 「ん?どうしたの」 「いえ、あの・・・爪が」 「爪?ちょっと、何で顔赤くなってるの?気になるじゃーん。ちゃんと最後まで言ってよー」 「その、えっと・・・今日あの、千聖に、だから、・・・・切ったのかな、っておもって」 何て言えばいいのかわからなくて、かなり噛んでしまったけれど、えりかさんは私の言わんとすることをわかってくれたらしい。 「ていうか、遅っ!今気づいたの?千聖ぉ」 「あ、あのそんな、だって、まさか、えと、そんな・・・ンッ」 慌てて体を捻ったことで、体の中で馴染んでいたえりかさんの指の感触が内側で蘇る。 「そろそろお風呂上がろっか。のぼせちゃいそう」 「ふぇ・・・は、はい・・・」 「じゃあ、とりあえずいったんここで」 「あぅっ・・・」 浴槽から出るのかと思いきや、えりかさんは私の背後に回って、最初と同じように抱きかかえてくれた。空いていた手がゆっくりと下に伸びて、私の敏感な外側のところに触れる。 「あっ!んっ、んぅ・・・」 「大丈夫、もう少し力抜いて・・・千聖可愛いよ」 内側と外側で連動させているかのように、指が動く。もう痛みはなく、耳元で「可愛い」と言われる度に、おへその下あたりがむずむずと反応する。えりかさんの腕の中で、今までも何度も味わった感覚。 「あぁ・・・あ、え・・り・・・・・や、ぅ・・ぁ」 もはや自分が何を言っているのか、よくわからない。体のあちこちが緊張し始めて、目の前の観覧車が滲んでぼやけて、眩く点滅している。 「可愛いね、千聖」 「――っ!!」 もう何も考えられない。あふれ出しそうな声を必死で抑えても、バスルームには私のはしたない息づかいとお湯がかき回される湿った音が反響する。 「あぁ・・・・」 「千聖?」 ゆっくりと体から力が抜ける。体から圧迫感が消えていくのをぼんやり感じながら、徐々にえりかさんの声が遠ざかっていった。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/218.html
被告の証言- いやいや、だから違うの。たしかに多少はしたけど、・・・千聖そんな顔しないで! あの後空き部屋に入って、千聖にこれからどうしたいか聞いたの。そしたらまたえりかさんにいろいろしてもらいたいってカワイイこというからウチも考えちゃって。 で、それなら完全に“そういう関係”をやめるんじゃなくて、もう少し軽くしようっていう話をしてたら千聖が「それは、どれくらいのことなのかしら?今、していただけるの?」っていうから・・・千聖フカ゛フカ゛しないで!最後まで聞いて! それで、しばらくそこでちちくりあってたら急に千聖が黙り込んで、また1人の世界にいっちゃったのかと思ったら、急にフカ゛りだして、「やめてよえりがぢゃん変態!」って叫んで逃げちゃったの。 え?具体的に何をしてたかって?それは、まあ、ほら、ちっさーのでっかーをたy・・・千聖、お菓子投げないで! というわけで、ウチにも何が何だかわからないんだよ。いきなり千聖が元に戻ったっていうのはたしかなんだけど・・・ 原告の証言- だから何ていうんだろう本当にいみわからないっていうかだって何かボーっとしてて気がついたら何ていうんだろうえりがぢゃんが胸とかすごい何かいっぱい触ったりしてて 怖くて何かヘンタイだと思ったから暴れて何ていうんだろう逃げたら愛理は全然普通で何かよかったし安心したけどえりがぢゃんが 「・・・にゃるほど。」 2人の話を頭の中で整理していると、「私絶対そんなこと言ってない!」と千聖がえりかちゃんに食ってかかっていた。 「だってお嬢様の千聖に言われたんだもん!」 「だから、なんで千聖がお嬢様なの?」 一応千聖には、頭を打って千聖がお嬢様になっていたことは伝えた。でも、千聖本人は実感がなみたいで・・・ 「千聖、仕事で避暑地のコテージに泊まったのは覚えてる?」 「うん、覚えてる。舞美ちゃんと栞菜と一緒にアスレチックした。なっきぃとアイス作った。」 「・・・ウチと同じ部屋だったことは?」 「うん。・・・でも、私途中からあいりんの部屋に行ったよね?なんでかわかんないけど」 ―どうやら、千聖は“自分がお嬢様キャラに変わっていたこと”“えりかちゃんとエッチなことしてたこと”に関する周辺記憶は、まだらになってるみたいだ。哀れ、えりかちゃん! 「だから、もう、わけわかんないけど、千聖はえりかちゃんとそそそそういう変態的なことはしないから!」 「変態・・・」 千聖はガッチリ私の二の腕を握って離さない。えりかちゃんのことを警戒しているみたいだ。 お嬢様の千聖はともかく、“こっちの千聖”は、案外下ネタに対する耐性がない。小学生レベルの「ウ●コ」「チ●●」程度だったら大笑いするけれど、とにかく自分に関わるエッチ系の話は本当にダメみたいだ。 「胸のこと言われるのやだ」なんて真っ赤な顔で言われたこともあったっけ。そんな千聖が、大好きなお姉ちゃんのはずのえりかちゃんに誰もいない部屋で体を触られてたとなったら、本気でパニックになるのもしかたない。 「・・ちなみに、私が千聖の家に泊まりに行ったことは覚えてる?」 「もちろん!千聖が犬の着ぐるみで、あいりんはカッパだったよね。歌ったりマニキュアしたり。」 「そうそう♪」 よかった。乳触り魔だとは思われてないらしい。 「ギギギギ・・・・」 えりかちゃんは“愛理だってお嬢様と相当なことしてるだろうが!”と恨みがましい視線を飛ばしてきたけれど、気付かないふりをしてみた。・・・私まで当事者だなんて知ったら、千聖はもうラジオどころじゃなくなってしまいそうだ。 ほどなくして、本番の時間がやってきた。 ジングルの後、えりかちゃんと私がしばらく2人でトークするのを、千聖は出番まで黙って聞いている。 千聖は意外に頭の切り替えが早い。さっきまでえりかちゃんをほとんど痴漢扱いしていたのに、今は心を落ち着かせて、私達のおしゃべりに聞き入っているみたいだ。・・・とはいえ、テーブルの下の手は、私の手をしっかり握ったままだったけれど。 「はい、今日のゲストは岡井千聖ちゃんでーす!」 「どーも、よろしくおねがいしまーす!」 千聖の出番が来た。 そのテンションは見知った・・・というか、長年付き合ってきた千聖のもので、懐かしいような面映いような不思議な気持ちになる。 相変わらずえりかちゃんは少ししょんぼりしたままだったけど、さすがに少しまずいと思った千聖がフォローを入れつつ、収録は進んでいった。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 - +52